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おへそ仲間の声

山のある暮らし|移住コラム vol.1

2017/09/21

沖縄生まれ、東京から恵那山麓に移住して1年と半年。古本屋「庭文庫」店主として活動しながら、恵那山麓の四季折々の風景や普段の暮らしを綴るコラムです。

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東京から岐阜県へ移住しました、と自己紹介すると、「覚悟があるのね」と言われることが多い。別に覚悟なんてなかった。あんまり人が多くないところで、好きな人と暮らしたかったことと、山が美しかったことが気に入っただけだった。

沖縄の実家を出てから、大阪、東京でしか暮らしたことがなかったから、山の近くの暮らしは新鮮だった。五月に田植えをしてから、どんどん大きくなっていく稲や、秋に実る栗や、おばあちゃんたちの染める藍に心打たれた。働き出してからも、それは変わらず、いつでも頼もしい笠置山や遠くに見える恵那山に励まされる。雨の日は、水墨画のようであるし、晴れた日は空が光っている。
 
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都会が恋しくないか、と言われると、たまに恋しくなる。自由で明るくて、好きなときに一人になれる場所。でもあそこには、山も海も土もない。リスやイノシシやニホンカモシカもいない。恵那山麓は、地味で、静かで、派手なことは起こらない。斉藤和義のライブもないし、映画館もない。変なおじさんが歌う井の頭公園もないし、レディーガガも来ない。それでも、私は恵那が好きだ。

「四季を忘れないものは、人生を掴む」と言ったのは、H.D.ソローだった。このへんは盆地だから、夏は暑く、冬の寒さは厳しい。でも一年半住んで、それらが嫌になることはなかった。春には、花や草木が芽吹き、秋には虫たちが死んでいく。土とととも生きることは、大きな循環の中で暮らしていくことだ、ということがわかりはじめたのも、ここに住むようになってからだ。

 
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都市部の方が、大きな循環があるんじゃないか、と思う人もいるはずだ。特に東京はお金も権力も情報も政治も集中して、あそこにいると、社会の流れや権力を感じずにはいられない。しかし、人ばかりで生み出す循環が、大きな循環と言えるんだろうか?

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解剖学者である養老孟司が「都市は人の脳みそを写し出したような場所だ。ずっと見てたって良いことはない。1日15分は木を見ろ」と話していたことが、この頃になってやっと腑に落ちるようになった。木は、ただただ立っている。土と太陽から栄養をもらい、葉っぱを生やし、花をつけ、果物がなり、落ち葉は土へ還っていく。なぜここに木が生えているのか、誰も知らない。こう書くと普通のことみたいだけど、やっぱりとっても変だ。

そういえば、私もどこから来たかわからないまま、ここに住んでいるんだった。いつのまにか、私として生を受けたけれど、それは私が決めたことではない。自分が決めた、とおもっている大学や、就職先や、移住先だって、春に草が伸び、冬には葉っぱが落ちるように、周りのあらゆる影響を受けて、勝手に決まったようなところもある。

 
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なにもかも、自分で決めている、と考えていた頃の自分が恥ずかしくなる。沖縄で生まれ育ったことや、両親が教えてくれたことや、友人や恋人や、恵那の山々や故郷の海が、行き先を後押ししてくれたことが何度あっただろう。もちろん、最終的に決めたのは、私自身だけれど、「私だけで決めた」なんて言えないよね、と木を見ながらおもう。

どこから来て、どこへ行くのかわからないまま、朝起きて、働いて、ご飯を食べ眠る日々に結構満足している。動かない木や山にはなれないから、転がる石のように、生きていけたら最高だな、とおもいながら。

 
おすすめの一冊
『森の生活』H.D.ソロー著

ハーバード大学を卒業した米国の作家、ソローが1854年に出版した作品。2年と数ヶ月、ウォールデン湖のほとりに丸太小屋を建て、自然や孤独な生活での思索をまとめた一冊。

四季折々の美しさや自然の不思議さが胸に迫ります。私が恵那山麓に引っ越して来た一因は、大学生の頃にこの本を読んでいつかこんな風に暮らしてみたい、と思ったからでもあります。


この記事を書いた人

中田 実希

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古本屋「庭文庫」店主兼恵那市地域おこし協力隊。 沖縄県那覇市出身、大阪市立大学卒業後東京のイベント企画会社勤務。 2016年3月、岐阜県へ移住。 草木染めと読書が好きです。

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