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おへそ仲間の声

いつか死んでしまうわたしたちへ|移住コラム vol.2

2017/11/09

沖縄生まれ、東京から恵那山麓に移住して1年と半年。古本屋「庭文庫」店主として活動しながら、恵那山麓の四季折々の風景や普段の暮らしを綴るコラムです。

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前回の投稿で、覚悟なんてなかった、と書いたけれど、それは半分本当で、半分嘘だ。
おそらくひとつだけある覚悟の源泉は、いつか死んでしまう、ということにある。

ちょうど2年前の2015年10月、東京から4時間半高速バスに乗って、はじめて恵那に来た。山と空が美しく、体が痛かった。迎えに来てくれた車に乗って、ボブディランを聴きながら見る街中は、変な映画のセットみたいだった。

変わった外観のカラオケボックスや、恵那水族館と名前のつく謎のお店(たぶん魚専門ペットショップ)、ネオン輝くインドカレー屋(しかもチェーン店)や、夜でも煙の上がる製紙工場。

よくわからない街だな、とおもいながらも、12月には恵那山麓に移り住むことを決めていた。

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移住を決めてから、家の手続きや、仕事の退職の挨拶や、両親への報告で忙しい毎日を過ごした。

怒涛のように物事が動いていくのを、他人事のように感じながら、引っ越しの日を指折り数えて待っていた。
過度な不安も過大な憧れもないまま、移り住めることをとても嬉しく思っていた。3か月は暮らせる貯金があるし、そのあとは失業手当も出るし、失業手当が切れるころに就職したらいいや、と明るい諦念のようなものだけを握りしめていた。

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明日死んだら、絶対後悔する、と思わなくなっただけ、ずいぶんと身軽になった。

都会っ子でないわたしにとって、東京は借宿に過ぎなくて、もしここで事故にでもあって一生を終えてしまったらどうしよう、という不安がずっと頭の片隅にあった。同時に、東京にいる頃は、ここで事故にあえば、会社に行かなくてもいいのかな、と頭をよぎることが恐ろしかった。107歳まで生きたいと思っている反面、職場に行きたくないから、朝が来なければいいと思った夜もあった。

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日々はいつもなめらかに抜かりなくするすると動いてゆくから、いつかこの世を去っていくことを忘れてしまいそうになるけれど、今日という日の積み重ねのみが、わたしの人生を支えている。

いつか死んでしまうわたしたちへ、必要なのは、未来のための幸福の貯金だけではなく、今の自分自身への慈しみの眼差しなのではないか、と強く思うようになった。いつか、ではなく、今すぐに、おいしいごはんを食べること、好きな人といること、欲しいものを、欲しい、と言うこと。

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移住してから1年半、すべてがハッピーだったわけではない。嫌なことも、楽しいことも、むかつくことも、嬉しいこともたくさんあった。でも、恵那に住んだからこそ、はじめることのできた庭文庫があって、季節ごとに変わっていく山々を見ることができて、彼や、えなここの園原さんに会えて一緒に過ごしていけることが、今は嬉しい。

いつか、わたしも、彼も、あなたも、いなくなってしまう。それは、とても恐ろしいことだけれど、同時にその恐ろしさがあるから、すこしだけ自由に生きていけるような気がする。

 
おすすめの一冊
岡本太郎
『自分の中に毒を持て』岡本太郎著

岡本太郎のことを、親愛の情を込めて、普段から太郎ちゃん、と呼んでいる。

太郎ちゃんは、安全な道と危険な道があれば、危険な方を選べ、と言う。危険な道が見えている時点で、そちらに進みたいのだから。それで死んだって構わない、と。

わたしは、長生きしたいから、死んだって構わない、なんて言えないけれど、そういう風に生きた太郎ちゃんは、本当に格好良いなぁと、いつも惚れ惚れとしてしまう。


この記事を書いた人

中田 実希

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古本屋「庭文庫」店主兼恵那市地域おこし協力隊。 沖縄県那覇市出身、大阪市立大学卒業後東京のイベント企画会社勤務。 2016年3月、岐阜県へ移住。 草木染めと読書が好きです。

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